リゾート施設、バックカントリー、文化体験など頼りになるガイド
日本でのスキーは、底なしの冷たい雪、寿司、温泉、そして英語がほとんど通じない異世界の領域に来たことを意味する。昔からの文化、地元の人の笑顔、都市と田舎が隣り合わせであることはスキーと同じぐらい日本の旅を印象的にしてくれる。リフトを利用したスキーにとって日本は世界で最もエキゾチックで礼儀正しい場所だ。しかし、日本に向かう前に選り分けるための情報や計画がある。このガイドでは旅を特別にするためのJaPOW情報をまとめた。

日本へ向かう
島国日本は他の多くの場所と似ても似つかない。しかし東京には1400万人がおり、地球で最も大きな都市の一つなのでフライトの選択肢は多い。
フライト
日本行きのフライトは驚くほどリーズナブルだ。例えばニューヨークから東京の場合、移動距離は長いがスキーのハイシーズンでは$1500以下となる(スキー用品を持っていったとしても)カリフォルニアからなら$900以下を軽く下回ることも可能だ。ヨーロッパからのフライトは€800ユーロほどだ。
スキーができるスポットにアクセスできる空港は主に2つだ。東京と札幌だ。そこから小さな規模の空港に乗り継ぐことも可能だ。例えば東京ー北海道間の役半分の距離の秋田空港だ(東京から車で数百キロ)

旅行費用
日本は世界でも有数の技術発展をしている先進国であり、世界一の長寿国でもある。したがって日本がリーズナブルな国であることに驚く人は多い。特にスキーにかかる費用においてだ。大まかな金額は 基本の旅行費リストをみてほしい。
さらに米ドルとユーロに対して円安となっている。(2023年12月)他国と違い日本は金利を過去数年あげていないからだ。現在、1ドルに対して150円になり、数年前より25%ほど安くなっていることを意味している。一方輸入品は円安為替のため価格がつり上がっている。
高価なものもある。限られた予算で旅行するのであれば、東京で長く滞在することは見送りたくなるだろう。東京の物価は他よりはるかに高いからだ。といっても信じられないほどの金額ではない。昨今ではニセコのロッジや人気のスキーリゾートも値上げしていっている。
一方、レンタカー、公共交通機関、リフト券やレンタル品、飲食の価格はすべて妥当な金額だ。(もう一度言っておくがニセコからは離れたほうがいい)リフト券は通常約$40-50で、旅館はだいたい$100ほどだ。朝食、夕食、得てして温泉がついていることを考えると悪くない。

翻訳
翻訳は以前はかなり大変だった。スマホの登場によってあらゆる人との会話が成り立つようになった。馴染みのない人はGoogle翻訳をインストールし文章をスマホ上で翻訳しよう。文字を入力して音声で出力することも可能だ。
ほとんどの人が英語や他のヨーロッパの言語を話さないので翻訳機能を頻繁に使うことになるだろうからスマホの充電をお忘れなく!
出発前に少し日本語を学んでいこう。日本の人は喜んでくれる。驚くことにそれほど難しいわけではない。書くことはかなり難しいので気にせず、基本的なフレーズを言えるようにしておこう。
日本は数百年もの期間、閉ざされていた孤独な地だった。18世紀から19世紀にかけて200年もの間、外国人は入国することを許されていなかった。日本社会にはいまだにそういった雰囲気が残っている。例えば外国人が日本に移り住むことは難しかったりする。さいきん世界に門戸を開いた勤勉でホスピタリティ溢れる日本のために我々ができる最低限のことは、日本語を学ぶために少し時間を割くことだろう。
日本国内移動
日本は驚くほど鉄道路線が発展している。ハイスピードの新幹線は列島を横断するのに効率がいい。
スキーヤーとして、読者は二酸化炭素の排出量が気になるだろうし、日本について気づくことはいかに全てが経済的かということだ。公共交通機関は優れているし、特に東京の宿は小さく、車もコンパクトでヨーロッパに似ている。一人分の食事量も適量だ。
筆者が公共交通機関を勧めたい気持ちと同じぐらい、混み合っていないエリアでスキーを経験したいスキーヤーにとっては車は重要だ。

レンタカーか列車か
日本の列車は驚くほどすごい。志賀高原やニセコといったリゾートへ公共交通機関でいけるだろう。便利でレンタカーより安く済ますことができる。
しかし多くの日本を訪れる欧米人は米国やヨーロッパでの典型的な方法でスキーリゾートを予約しない。たいていは、出来うる限りパウダースノーでスキーをするし、雪がどっさり降った場所に応じて車で回る。さらに日本には500を超えるスキー場があるが、多くは規模が小さい。一つの場所にとどまるよりはいくつかの場所を経験するほうがより楽しいだろう。
公共交通機関であっても、小さな規模のスキー場を含め多くのスキー場を訪れることが出来る。しかし車を借りることで得られる小さなメリットがたくさんある。
- 雪の嵐を追いかけることは気づかずに旅行をしていることになる
- 公共交通機関は日本語なので難易度が上がる
- 列車でギアを運ぶことは大変だ
- スキー場がすぐそばの場所に車を止め、そこからアクセスできる。そうすれば宿泊費の節約になる。
- 小規模だが本格的なスキーリゾートには公共交通機関でアクセスが難しかったり、出来なかったりする。

レンタカーを借りる際のアドバイス
日本でのレンタカーは割安で複雑なことはない。必ず4WDを借りる必要がある。山道は絶え間なく雪で覆われていて、急なUターンも多い。
危ない道といえば、ドライブの大半をゆっくり運転することになるだろう。リゾートに向かう道中でレースをしようとしないこと、さもないとオフロードに行くことになるか、もっと最悪なことになるだろう。
スキー用品を載せるラック を持っていけば節約になる。スキーをしにくる多くの人は ラック を持参し、日本で借りた車に載せる。レンタカー会社は通常ラックは提供しないし、あったとしても追加料金となるだろう。
頭に入れておかなければならない点
- 日本で運転する際には国際免許書の取得が必要。欧米諸国では一般的には安価で簡単に取得可能。
- 飲酒運転は認められていない。飲んだら運転はできない。
- イギリスのように左側通行となり、右側ハンドルである。
日本の天候
日本の天候は多くの理由から魅力的だ。素晴らしい四季があり、季節そのものが名高い。例えば春になれば、桜は地元の人や観光客を長く魅了してきた。桜を見ることに”花見”という名称すらある。しかしここではもちろん冬の話をしよう。

日本の冬は地球上でかなり雪深くなる。北海道のスキー場では毎年合計で15メートル以上の積雪を頻繁に観測するが、ほとんどの雪は12月中旬から3月初めにかけて降る。毎年10週間ほど絶え間なく降り続けるため、日本は最も確かなパウダースノーの場所となっているのだ。
日本がなぜこんなにも信頼されるパウダースノーなのかというと、雪が発生するメカニズムが私の知りうる限り他の世界のどの山よりも大きく違っているからである。以下に説明する。
- 冷たく乾いた空気がシベリアの凍土上空にあつまる
- 天気は西から東に向かってながれるためこの寒気を運んでくる
- この寒気が冬でも凍らない比較的温暖な日本海を通り、海からの水蒸気と交わる
- 寒気は十分な水分を含み、日本の山々にぶつかると上昇し、より温度が低下することで水分を凝縮し雪に変わる
- ひと冬中これが続く、もしくはシベリアから冷たい空気が流れ着く限り続くのだ。なぜなら日本海は凍らないからだ。
- シベリアの空気はカラッとした雪質に貢献しているのだ
北極の空気は容赦ない風とともに日本に到達する。森林限界を超えると、スキーを存分にするには風が強すぎる。ほぼ全てのスキーリゾートが森林限界を超えないものの、一部では雪上車(CAT)を使ってその先に行くCATスキーを提供しているリゾートもある。

日本の冬
日本の冬は馴染みのある欧米のスキーリゾートとは違ってくる。1月(知らない人のために:ジャパニュアリーと呼ぶ)と2月がスキーにもってこいの時期だ。12月や3月は世界中からフライトしてまでくる価値はない。
シベリアからの風が吹きはじめて数週間たてばすぐにスキーを楽しめる。通常2月の末まで雪は降り続ける。しかしその後は消防ホースをしめたようにとまってしまう。北極の風がやむと春のスキーがすぐに始まる。
実際日本はかなり南に位置する。志賀高原や東京の周辺のスキー場はラスベガスと同じ緯度(北緯36度)なのだ。スキー場の最高地点は2500メートルほどに達するが、麓はそれより低く、多くのスキー場に最高地点までいくリフトがない
一方、北海道は北緯42度となるのでワイオミング州のJackson Hole やヨーロッパのピレネー山脈と同等だ。しかし高度はほとんどないに等しい。多くのスキー場は海水面と同じ高さに始まり、最も高い旭岳でもたったの1,600メートルだ。
南緯、太平洋の穏やかな影響、そして高度が高すぎないことから、ひとたび北極の風が水蒸気を失ってしまうとパウダースキーはとたんに終わってしまうのだ。

日本のゲレンデ
日本には500を超えるスキー場があり、いつでもアクセスできる様々なタイプの地形が存在する。特にバックカントリーのスキーにおいては、どんな地形をも見つけることができるだろう。そうはいってもスキー場の多くには共通する特色がいくつかある。

木々
あそこにもここにも木というぐらい日本には木がある。木々の中で滑りたくなければ日本に来なくてもいい。それぐらいシンプルなことだ。
日本の森は文字通り、また比喩的にも魔法がかかっている。文字通りというのは、森は魂の帰る場所であるため日本人はむやみに荒らしたくないのだ。日本人がオフピステでスキーをする姿をほとんど見かけない理由がこれだ。多くのスキー場はロープで木を囲い、立入禁止となっている。(年々そういった場所は少なくなってきていると感じるが)また森はカモシカや、野沢のスノーモンキーといった動物の生息地でもあるのだ。

他の国々のスキー場の松とは完全に異なり、白樺の森は比喩的にも魔法にかかっているのだ。まるでスキーヤーを神秘の隠れ家へ誘っているように白樺はゆったりと生えている。
また白樺により雪や風が吹雪いている時も80%の確率でスキーが可能になる。枝と枝の間を雪がまう時、猛威を振るう嵐も囁き声に変わるのだ。氷の世界の真っ只中で白樺の木は真っ白な骨のようになるのだ。

2012年にChad SayersとJordan Manleyが訪日し“A Skier’s Journey,”という世界中でスキーをするYouTube動画の中で、日本を扱ったものがある。現時点では古くなっているが、今でもジャパウ(JaPOW)を扱った動画の中で筆者のお気に入りの一つだ。
ガレとランアウト
ガレとランアウト(堆積)には気をつけなければならない。日本ではこういった自然地形がよくありパウダースキーを台無しにしかねない。時には脱出するために何時間もかかるかもしれない。しかし脱出することが大変なほど、たいていはいい日が待っていることを意味する。
日本のスキー場はさほど大きくない。しかし初めていくのであればあちこちで立ち往生することになるだろう。
PeakVisorを使っても地形を詳しく見ることができる

穏やかな傾斜
日本のほとんどのゲレンデは特段険しいわけではない。あちこちで険しい写真は目にするかもしれないが、傾斜はたいていの場合とてもなだらかで15−25度だ。アメリカでいえば、スチームボートやディアバレーと同程度だろう。
究極のスキーヤーにとってはつまらないかもしれないが、ブレーキをかけることなくツリーランを行うには穏やかな傾斜が最高なのだ。パウダースノーによって、浮いてた感覚を持ち、自分のさじ加減で進むのだ。
PeakVisorを使ってスマホで傾斜を確認することが可能だ。(多くのスロープが30度以下のカテゴリーに入り、色で塗り分けられていないが)スロープのアングルをかえ全体像を見たり、特定の部分を指定して見ることも可能だ。

日本でのスキーにあっている人は?
すべてのスキーヤーが日本のスキーに向いているわけではない。天気はほぼ常に雪、風、そしてホワイトアウトによって特徴づけられる。またシベリアの風が日本海で蒸気を含み、山にぶつかってパウダースノーをふらせるため、過酷な寒さになることもある。さらに険しいゲレンデはそこまで多くないため、ヨーロッパや北米での大規模なゲレンデに慣れている究極のスキーヤーやビックマウンテンスキーヤーには物足りないかもしれない。
日本でのスキーにおすすめな人は
- 悪天候だとしても雪深い場所でのスキーに興味のある人。
- ツリーランが好きな人。
- 日本食が好きな人。
- おそらく最も大切なポイント:スキー旅行と同じぐらい日本文化を発見することに興味のある人。

日本でのスキーをおすすめしない人は:
- 究極の地形でスキーをしたい人。信じがたいが日本にスキーをしにきて、平坦なスロープだったと文句をたれるスキーヤーが実際にいたのだ。
- 欧米のラグジュアリー感を求めている人(特にニセコや志賀高原では見つかるかもしれないが)
- 穏やかな天候でスキーがしたい人

日本のベストスキーリゾート
JaPOWは500を超えるリフトのあるスキー場、またバックカントリーマニアにはうってつけの数えきれない火山や山道がある場所だ。その多くは耳にしたことがないような小規模だったり、知らない人はいないほどの有名なスキー場もある。
そういった一連のスキー場の中で、一番を決めることはいつだってナンセンスだ。雪のコンディションによるだろうし、地形の好みにもよるし、はたまた温泉が好きかどうかでも変わってくる。また1日の終わりに経験したことがないような気持ちにさせてくれる旅館があるかもしれない。いい雰囲気の居酒屋に行って食べたことがないような美味しい焼き鳥を食べるかもしれない。
欧米人が毎冬日本でスキー巡礼を続けていて、その数も増えている。そのため多くの場所がかつては知られていなかったものの、”発見”されてきている。ここでは要チェックの場所を取り上げる。有名どころもあれば、より本物の体験ができるようなあまり知られていない場所もある。

北海道のスキー場
北海道はパウダースノーのメッカだ。日本の北に位置し、本州より雪が多く降る。また雪も北海道と本州とではどちらも比較的軽いものの、北海道の方がはるかにカラッとしている。北海道全体ではスキー場は本州と比べて多くないものの、特にバックカントリーを検討している人なら、冬のシーズンをかけて探索できるほど十分なスキースポットがある。

ルスツ
他の多くの場所と同じく、ルスツは以前まであまり知られていなかった。今はVail Resort’s Epic Passに含まれている。Epic Passを持っている人には最高だ。つまり5日間あってその全てをスキーに使えるのなら、数百ドルを節約できるだろう。マイナス面としては、前よりも混んでいるという点だ。つまりEpic Passを持っている欧米人がパウダースノーを求めにきているということだ。
一方、フリーパス以外にもスキーヤーがくる理由がいくつかある。まず第一に、北海道は12月後半から3月初旬にかけて14メートルの乾いた雪がふる。ツリーランもリフトから簡単にアクセスすることもできるし最高だ。さらに欧米と伝統的な日本を合わせた環境や設備が様々な価格で提供されている。
また日本のスタンダードなスキー場の規模からすれば、ルスツは大きい方だ。雪の嵐が続くなら5日間を過ごすことは可能だ。毎日ふりつもるパウダースノーでスキーができるだろう。もし毎晩雪が降らなければ、多くの人は退屈に感じてしまうだろう。

旭岳ロープウェイ
旭岳はコロラドのSilvertonやフランスのLa Graveのようだ。すべてのスキーヤーにおすすめというわけではないが、飾り気のないスキーを北海道で楽しみたいなら、旭岳がおすすめだ。
名前にロープウェイとつくが、実際にはゲレンデを登るにはケーブルカーを使う。スキー場は活火山に近く、時に地球から漏れ出たガスの匂いを嗅ぐことができるだろう。
すでに気づいているかもしれないが、旭岳はリフトでアクセスできるバックカントリーを希望する人にはベストだ。ケーブルカーの周辺のパウダースノーは期待外れかもしれないが、そこから離れたルートに思い切って進んだ人にはお楽しみが待っているだろう。
日本にある場所の中で、旭岳が一番ガイドが必要になる場所だろう。例えスキーのエキスパートとしてもだ。すべること自体は特別難しいわけではないが、道を見つけたり、平坦なランアウトに手こずるかもしれない。リフトに戻るために横切る斜面が長いことからスノーボーダーはあまり楽しめない可能性がある。ガレやランアウトは本当に侮れない。胸まで積もった雪を1キロ横断することを想像してみてほしい。
一つ言い残したことは、活火山があることからいくつかの名高い温泉なしには旭岳は完結しない。

ニセコ
ニセコ。この場所を書かずしてガイドは成り立たないだろう。欧米人が過去10年ほどでこぞって訪れてきたが、ニセコは今でも、特に欧米の基準から見ておそらくベストなスキーリゾートだろう。
ゲレンデの麓には欧米スタイルの宿泊施設や素晴らしい食事が十分にある。しかしニセコの何が特別かというと、欧米にあるSteamboatやBig Whiteのと同等な広いゲレンデだ。多くの日本のスキー場は小さく、欧米と比べるとニセコも特別大きいわけではないが、北海道では一番の規模だ。
ニセコではツリーランを思い存分できるし、ツリーラン用に雪が薄くなるように手入れされている場所もあるし、圧雪されている箇所もある。リフトも効率的で、1日で何度も滑ることができる。晴天の下でのパウダースノーはすぐに滑ったあとがついてしまう。パウダースノーマニアは白樺の森に雪がふりつもる嵐の日を待ち望むことになるだろう。(考えてみればニセコでは雲ひとつない青空よりも、嵐の日の方が多いのだ)毎年雪は14−16メートルほどつもり、そのほとんどはクリスマスから3月にかけて降る。
人が多いこと、本物の日本文化をあまり感じられないこと、そして物価が高いことはニセコの短所といえる。この地はは欧米スタイルのスキー場であることから、欧米と同じぐらい費用がかかると判断したのだ。

本州のスキー場
本州へようこそ。ここは日本のメインとなる島だ。メジャーなスキー場のほとんどが本州に位置する。一般的に北海道と比べると雪が少なく、雪質も固めになるだろう(秋田県の阿仁や田沢湖は別だが)しかし山は開けていて、多様なゲレンデ地形や文化を楽しむことができる。

天神平スキー場
旭岳ロープウェイのように天神平の最大の魅力はリフトでアクセスできるバックカントリーだ。一般的に自然地形は旭岳よりもかなりいいが、天気は変わりやすい。大嵐が来て何日もケーブルカーが閉鎖することもあるし、ホワイトアウトでスキーができないこともある。さらには雪が降ったあとに雪崩が起きる可能性もある。
それでも天神平に興味があれば、エキサイティングなゲレンデと深いJaPowの完璧なコンビネーションを楽しめるだろう。人混みのことをあまり気にせずともいいしだろうし、山奥へ進むことをいとわないスキーヤーはいつだってパウダースノーを楽しめるだろう。
すべったあとに温泉につかりたい人には、近くに宝川温泉がある。ここは日本で最も大きな規模の温泉の一つだ。この辺りの旅館に滞在して天神平にすべりに行くことも可能だ。

阿仁
秋田県は簡単にアクセスできる場所ではないものの、労力を惜しまないスキーヤーにはパウダースノーのご褒美が待っているだろう。阿仁では日本らしいスキーを楽しめる。小規模なゲレンデに愛らしい木々と手入れされた滑走路だ。しかし阿仁の本当の価値は山頂付近からのショートスキーツアーだ。魔法のような白樺の森を駆け抜けるオフピステのツリーランが広がっている。

穏やかな天気に関しては、あまり期待しない方がいい。なぜかというと日本海を渡ってきた嵐はまず阿仁でぶつかって雪を降らすのだ。ラッキーなことに木々が風から守ってくれる。そういった地形や日本の森やガレに馴染みのない人たちにとって、ガイドは助かるだろう。

田沢湖スキー場
このスキー場は秋田県の可能性に気づかせてくれた場所だ。田沢湖スキー場 は小さく静かな場所、というか何もない場所だ。混雑していなくて、頻繁に雪がどっさりふるこの地は探索する価値がある。ゲレンデは語り継がれるようなものではないかもしれないが、傾斜の角度は高く、日本らしい白樺ツリーランをわずかな人で楽しめるだろう。
田沢は嵐の中で風が吹き荒れることがあり、リフトはかなりスロー運転のためスキーをするには寒く感じるだろう。ありがたいことに温泉が麓にある。

野沢温泉
温泉という名がつくスキー場はどこでも、パウダースキーを楽しんだ寒い1日の終わりに体を癒してくれるあつい温泉を利用できるはずだ。それが野沢温泉だ。おそらく日本で最も古いスキーの街だ。

街自体は温泉が発見された8世紀に生まれ、1912年に西洋人によってスキーの文化がやってきた。元々スキーの街として生まれたわけではない野沢にはたくさんの魅力がある。建物は低層で数十の温泉が町中に広がっている。たくさんの伝統的な旅館やレストラン、またストリートフードといったものに触れることができるだろう。
この街でスキーの存在は他の日本らしい文化と比較して少々劣るかもしれない。東京からほど近い長野県にあるこのエリアは、日本の北のエリアに比べて積雪量が少ないからだ。とはいっても10メートルとかなり積もるのだが。スキー場のある街というより、スキー場そのものにフォーカスを当てている他の掲載スキー場と比較すると、ゲレンデは見劣りするかもしれない。


ニセコ以外をチョイスする理由
北海道に位置するニセコは国際的に一番有名なスキー場だ。日本の平均的なスキー場より規模も相当大きく、素晴らしいゲレンデやツリーランがありカラッとした雪が多い。15年前ぐらいまではニセコは行くべきところだった。それは欧米人がこぞって日本にパウダースキーをしに行く前の話だ。今はオーストラリアでのスキーとニセコとではほぼ変わらない。
筆者が思うに、日本での旅行の楽しみの半分は文化に浸るという点だ。食事、温泉、旅館、そして日本語という外国の新たなサウンドだ。ニセコでは広い白樺ツリーランにリフトでアクセスができる一方で、オーストラリアからやってきたパーティー好きな若者文化を知りたいと思わない限り、文化的な価値は何も見出せないだろう。
日本での経験を得るためのベストな方法は、地方の小さな規模のスキー場を転々と周り、たくさんの場所で運試しをすることだ。
またニセコを外せばお金の節約にもなる。(数千ドルの節約になることもあり得る)ニセコにしか行かなければ気づかないだろうが、日本は実際にはかなりリーズナブルな国なのだ。

ロッジ
スキー旅行以上に、どこに滞在するかが日本でのスキー旅に重要だ。伝統的な夕飯は提供されるのか?たたみと布団で寝るのか?温泉にすぐ入れるのか?
日本の宿泊施設として代表的なのは旅館だ。日本滞在中、旅館や民宿以外に泊まらない理由はない。
旅館は日本の山小屋(refuges)みたいなもので、温泉街や山あいの街にあることが多い。夕食と朝食がついてくる宿泊施設で食事はたいていクオリティが高く、旅館の売りでもある。欧米人からするとたたみと布団で寝ることに慣れず、ホテルを選ぶかもしれない。たいていの有名なスキー場ではホテルを見つけられるだろう。大きな旅館もあれば小さな旅館もあり、値段もまちまちだ。温泉街の旅館にはたいてい温泉が備わっているだろう。

民宿は旅館より格安になる。旅館と同じような寝床な一方で、家族経営だったり小規模であることがおおい。旅館のように食事が目玉であり1泊につき1〜2食がついてくる。
ペンションは民宿のようなもののベッドで寝ることができる。予算が限られている人には欧米風のホステルもある。
日本が世界的に有名な旅行先となるにつれ、欧米スタイルのホテルは必然的に増えてきた。東京のような都市部では といった究極に格安な宿泊施設もあるが、スキーリゾートの街ではほぼ望めないだろう。当然ながら貸別荘を取り扱うAirbnbやVRBOといった選択肢もある。

食事
日本はパウダースキーで名高いが、さらに類いまれなる食文化で有名だ。今は亡きAnthony Bourdainが東京は 世界で最も素晴らしい食が集まる場所 だと褒め称えた。きっとたくさんの店に足を運んだであろう。また完璧さを追求し続けている寿司職人の Jiro(小野次郎)も挙げられる。彼こそが日本の完璧さを表している。
あなたやもしくはスキーに乗り気じゃないパートナーも日本旅行をまるごと食文化で彩ることができるだろう。 山あいの街でさえそれは可能だ。
居酒屋で多くは叶う。温かみがあり、安らげる居酒屋では多様な食べ物や飲み物が提供される。日本のアルコール文化も豊かで、酒、ビール、国内で醸造されたウィスキーがある。山あいにある街の居酒屋も歴史があり、同じ場所で何十年も、何百年も続く店もある。食事は主に大皿で提供される。 山間の町での食事 には、定番の和牛や味噌汁、ラーメンといった温かい汁物。そして蕎麦や山菜が提供される。もちろん生食や調理された魚介類もあるが、日本人は新鮮さを大切にしているため、海岸沿いに比べれば山間では寿司の選択肢は少なくなる。

温泉
日本のスキー場の多くは火山から湧き上がる温泉の周りにある。スキー場の名前に”温泉”とつくケースが多い。例えば野沢温泉や関温泉だ。
温泉は日本でのスキーにおいて最も魅力的な部分の一つだ。温泉の文化は奥深く、温泉街の多くは何千年もの歴史を持つ。熱い湯は街の周りで分かれて流れていることが多く、ホテル、ゲストハウス、公共の銭湯に湯だまりがある。野沢温泉が典型例だ。温泉街と旅館は特に切っても切れない関係でもあるのだ。
伝統に従い、温泉は何も身につけず男女別れて楽しむものだ。しかし海外からの観光客が増えているということはおそらくこういったルールの例外に前より出くわすかもしれない。男女どちらも利用できる温泉もある。
きっとここ以外では赤い顔をした温泉客を目にすることはないだろうが、地獄谷野猿公苑 では冬に温泉に浸かった猿を見ることができる。

ギア
日本の過酷な冬の天候により、スキーヤーはどんなギアを持ってくるかわからないかもしれない。出発前にチェックするメジャーなギアは以下だ。
ローライトレンズ
日本でスキーをするにあたって失敗することが多いのはゴーグルだ。多くのスキーヤーは十分に遮光されたゴーグルを着用して滑るだろう。ヨーロッパや北アメリカ西部の標高の高い場所にあるスキー場においては非常に有効だ。一方、日本において12月から3月にかけては太陽はめったに顔を出さない。特に北海道においては雪や風が止むのを何週間も待つことになる
そのためローライトゴーグルを持ってくることが重要なのだ。嵐で視界が悪い中で劇的な変化をもたらしてくれる。透明なレンズが重宝する。他のアドバイスとしては、いくつかのゴーグルを持参した方がいい。ゴーグル1つだけだと濡れて、1日中曇ってしまうからだ。
ゴアテックス
スキーヤーは自分のゴアテックスやウォータープルーフの性能をもつギアを自慢することが好きだ。でも実際に機能をテストする人はほとんどいない。日本はまさにスキーウェアの防水性を試すことができる場所だ。パウダーガードがついた上着や手首をおおう手袋は雪が入ってこないようにするためのマストアイテムだ。
アバラング
アバラングとは雪崩に遭った際に呼吸を確保するためのギアで日本でも有用だ。筆者が思うに、日本はこういった類のギアの使用を検討する唯一の場所だ。ヨーロッパや北アメリカと比較して雪崩に遭遇する確率は比較的低いものの、雪が強く降っていて滑っている最中に呼吸がしづらい場合にはアバラングがシュノーケルとしての役割を果たすため有益だ。よくあるプールのシュノーケルも使える。またツリーホール(日本では常緑植物が多くないためツリーホールも多くはないが)や秋から冬にかけてできたくぼみにはまった際にもアバラングは機能する。
シュノーケルがなければ、パウダースノーを吸い込まないように歯の隙間から息を吸うようにしよう。
ファットスキー
ファットスキーは日本では必要不可欠だ。140センチほどのスキー板が1シーズンで何日も使えるのはこの場所ぐらいだ。万一持っていない場合は(筆者も持っていないため心配する必要はない)レンタルしてみるのも手だ。深いパウダースノーの上をファットスキーで滑ることは驚くほど楽しい。

スキー用品を持ち込むか レンタルするか
北アメリカやヨーロッパからやってくるスキーのエキスパートたちはギアをレンタルするなんて馬鹿馬鹿しいと感じるだろう。正直にいうと日本では借りるのも手かもしれない。理由は以下だ。
- 素晴らしいスキーギアショップがたくさんあるし、日本はサービスに誇りを持っている(や今では翻訳アプリがあるから苦ではない)レンタルショップで見慣れている永遠に並ぶ圧雪用のスキー板と違い、いい店では高性能のパウダーラン用の商品を借りることができる。
- スキーヤーの多くは日本の厳しい天候にあった十分な幅のスキー板を持っていない。
- スキーのギアを運ぶとなると往復で200ドルほどを航空券代に乗せることになる。(スキー板以外の荷物全てをスキー用のカバンに入れられない限り追加費用がかかり、いずれにせよ受託荷物となるのだ)
ツーリングキット
日本での最高のスキーは、頂上のリフトより先へ自力で登っていくケースが多い。雪を蹴飛ばして登っていければいいが、おそらく1メートルの積雪の中でそんなことはしたくないだろう。バインディングやスキンを持っていればパウダースノー探しの旅では大きなアドバンテージとなる。(最近ではどこでも有用だ) CASTは筆者のお気に入りで、リフトから降りて1~2時間以下でアクセスできるバックカントリーへ向かうならおすすめだ。
日本でガイドを雇う
どこへ行ってもスキーのガイドをつけて楽しむ人もいれば、自分自身で冒険に足を踏み込むことを好む人もいる。どちらも完全に正論である。例えばヨーロッパにおいて、オフピステのスキーの多くは山岳氷河を進むといった山登りの要素を伴い、多くの人はそのための十分なトレーニングをしていない。ガイドを雇うことでベストな状態の雪に出会えるだけでなく、安全面に対する重要な要素を付け加えることができるのだ。

日本でガイドをつける理由はヨーロッパやアラスカのような大きな山でのスキーにて雇うのとでは違ってくる。日本には山岳氷河はないし、アルペンスキーの要素はあまりない。ゲレンデはさほど技術的にハードルが高いわけでもないし、日本にスキーにくるような人は多くがエキスパートだ。しかし日本でガイドをつけることを検討したくなるかもしれない理由がいくつかある。特に短期間滞在をする人にとっては。
- 500を超えるスキー場があり、多くは小規模だ。知る人ぞ知る穴場がたくさんあるのだ。
- 天候のパターンによってパウダースノーは様々な場所に、色々なタイミングで降る。
- 木々やガレが多く混乱することが多々ある。誤った道に行ってしまうと深い雪の中を1時間歩くことになるかもしれない。どこでスピード保って、どの道でスローダウンするかという事なども把握しなければならない。
- オフピステでのスキーを容認しているスキー場もあれば、そうでないところもある。ルールを定めているスキー場もあればそうでないところもある。ルールを守らなければ、最終的にリフト券を没収されることもあるだろう。
- 全てが日本語だ。理解するのに時間がかかるリフト券の購入方法や、駐車方法といった全部に所定の手順があるのだ。
- ガイド付きの旅のほとんどは交通の便や食事、宿泊施設を含む全てをアレンジしてくれる。こういったこと全てを理解するのに努力を要するのだ。(繰り返しになるが、日本では全てが欧米とは少し違うのだ。)
ここに書いた理由、またそれ以上の理由から日本での旅にガイドを雇ったスキーのエキスパートを筆者は多く知っている。とんでもないことにガイドを雇ったことのあるガイドの人すら知っているのだ。スキーと旅行計画にどちらも精通している人を雇うほうが旅は楽になるのだ。
ガイドを斡旋してくれる会社が数十ある。Hokkaido Powder Guides は口コミもよく素晴らしいガイドがいる(IFMGA認証)旅行を決める前に、適切な資格と経験を持ったガイドをしっかりと探すことをおすすめする。
最後に
日本は単に語り継がれるようなパウダースキーの経験にとどまらず、人生を数回かけて探索する価値のある歴史的でユニークな山での文化を味わえる。このガイドを手引きとして使って欲しい。そして日本を訪れ、冒険をしてもらえればと思う。そこには深いパウダースノーや魅力的な白樺の森と同じぐらい、たくさんの新たな出会い、湯気の立つ温泉、ほっぺたの落ちるようなラーメンがきっとあるだろう。